油圧技術を考える時、この言葉ほど意義深く感じるものはありません。
フランスのパスカル(1623~1662)によって、17世紀中頃にパスカルの原理として定式化されてから300年以上の年月が経過した現在でも、油圧技術は最新鋭のジェット旅客機から身近な自動車まで、広範な分野で利用されています。
これらのケースでは、いずれも信頼性が最優先される操縦装置やブレーキ等に使用されている事からも、油圧技術への信頼がいかに高いかが判ります。
自動車の場合には、主にパワーステアリングとブレーキに油圧技術が使用されていますが、何れも重要保安部品であり、本来は絶対に故障してはいけない部分です。それは当然の事で、一万回に一回でもブレーキが効かなくなる自動車などには絶対に乗りたくありませんし、ハンドルが効かなくなる自動車も同様です。
しかし信頼性が高いだけではこれ程までには普及しなかったでしょう。油圧装置には高い信頼性と同時に、機器がコンパクトで重量が軽く且つ価格が比較的安価であるという、高い経済合理性があるからこそ、このように多くの分野で採用されたのです。
では、なぜ油圧装置にはこのような優位性があるのでしょうか。その根本には、常態における液体の持つ優れた性質があります。
物質には基本的に気体・液体・固体の三つの状態があり、気体はその形を容器の形状に合わせて自由に変化させる事が出来るために、複雑な経路(配管等)を通過する事が出来ますが、圧力を加えると圧縮されて体積が変化するため、エネルギーの形態が変化(体積減少、圧力増大)してしまいます。
固体は圧力を加えても体積が変化しないため、エネルギーの形態が変化する事はありませんが、形状も変化しないために複雑な経路(配管等)を通過する事は出来ません。
液体は気体と同じように複雑な経路(配管等)を通過する事が出来、なおかつ固体と同じように圧力を加えても体積が変化しないため、エネルギーの形態を変えずに、複雑な経路(配管等)を通して効率的にエネルギーを伝達する事が出来るという、気体と固体の優れた要素を併せ持っているのです。
油圧プレスは、このような液体の特性を最大限に生かした油圧装置によって、機械設備に求められる高い信頼性と同時に、機器がコンパクトで重量が軽く且つ価格が比較的安価であるという、高い経済合理性を実現したプレスなのです。
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